2013年02月02日

いよいよシンポは7日木曜日夜です 一橋米倉教授が語るソーシャル・ビジネスとは

ARUNの設立3周年シンポジウムが
7日木曜日夜に迫りました。
市ヶ谷駅、麹町駅、半蔵門駅からアクセス可能な
千代田区一番町のいきいきプラザで午後7時から9時までで参加費1000円です。

今回の見どころ、聞きどころは何と言っても
一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎教授と
ARUNパートナーでライフネット生命保険の
岩瀬大輔副社長がゲストでいらっしゃることでしょう。
7時台は、お二人の講演があり、8時過ぎからは
ARUN功能聡子代表も交え、トークセッションが繰り広げられます。

先日のテレビ番組で、米倉教授は
「ビジネスは基本的に全てソーシャル。それをあえて
ソーシャルビジネスと言う以上は、税金などを使ってやってきた
社会的課題の解決をビジネスの手法を使ってやろうとしているところが
ポイント」とおっしゃっていました。

東日本大震災の復興予算が、ずたずたに多様な用途に
使われてしまった記憶は新しく官を通さずに
お金の流れを作る方が投資効率を上げ社会の改善をはかることができると
いうことなのでしょうか、興味津々です。

申し込みは、まだ間に合います。どうぞお越しください。

お申し込みは、こちらからどうぞ。

https://docs.google.com/a/arunllc.jp/spreadsheet/viewform?formkey=dFFrOUVXdV9sTFpwa1BnaV85Y1BPamc6MQ

posted by ARUN at 12:20| Comment(11) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

他では読めないインド・ソーシャルビジネスインターン記 その2

ARUN(アルン)新年企画として、1月から3回シリーズで、
ARUN LABの高野誠大さんのインド報告をお伝えします。
他では読めないインドのソーシャル・ビジネス最前線です。
どうぞ。(バックナンバーはこちらです)

前回に引き続き、私がインドの社会的企業ドリシテで学んだことを
紹介したいと思います。今回はドリシテが持つ「ハイブリッドモデル」と
呼ばれる組織構造についてです。

ドリシテはドリシテ・ディベロップメント・コミュニケーション・リミッテド
(DDCL)という営利企業と、ドリシテ財団というNGO部門を持っています。
前回の記事で紹介した、農村地域でのICTキオスクのマイクロフランチャイズや
流通事業はDDCLが担当しています。一方、ドリシテ財団は農村でのビジネスの
基盤を作るためのコミュニティ活動を担当します。では農村でのビジネスの基盤、
そのためのコミュニティ活動とは一体何なのでしょうか?

まず挙げられるのは、農村コミュニティのメンバーとの信頼関係の構築です。
ドリシテでは自分達がその社会に受け入れられることをとても大切にしており、
これをビジネスの社会的持続可能性と考えています。住民との絶え間ない対話や
クリケットの試合など、人々との間に有機的なつながりをつくることへの投資を
惜しみません。また、そのコミュニティでドリシテのビジネスを担う最も適した
人材を発見して起業家として育成することも重要です。起業家精神が旺盛で
コミュニティの中での信頼が厚い人材を探しだし、彼にドリシテのフランチャイズ
として働くためのスキルを身につけさせるのです。最後に、新しい価値に対しての
普及啓発活動があげられます。農村地域でのビジネスでは、新しい製品が自分達の
生活をどう変えてくれるのかという気付きを与えることがとても重要です。

しかしそのための広告手段は先進国のそれに比べればやはり劣ってしまいます。
ドリシテではこれらの普及啓発活動を社会的マーケティングとして行い、人々が
新しい製品の価値を認識し消費行動に変化を起こすプロセスへの投資も行っています。

ドリシテでは、こうした農村でのコミュニティ活動をドリシテ財団が担当し、
DDCLの営利事業の基盤を作っています。営利企業でありながら、NGO
部門を通じてコミュニティの発展への投資を続ける、これがドリシテの
ハイブリッドモデルです。そしてこのNGOとしての活動が、農村地域での
営利事業の拡大に際してとても重要な役割を担っているのです。

実はこのモデルはARUN(アルン)の投資先のセダックにも共通して見られるものです。
ARUNが投資しているセダックも、NGOであるセダックが営利部門の
サハクレハ・セダックを立ち上げ、農家が市場とつながるための架け橋を
築いています。

ドリシテはその逆で、営利企業として始まり、農村での営利事業の拡大のために
NGO部門を立ち上げました。
今回はドリシテのハイブリッドモデルについて取り上げました。

次号が最終回となってしまいます、とても残念です。
最後は、ドリシテが目指す「農家に所有される企業」という姿を
ARUNが行う社会的投資という文脈と関連付けて紹介したいと思います。

posted by ARUN at 10:49| Comment(15) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月21日

エッセー  クラスフォーエブリワンとの遭遇 (たまげたフィリピン訪問記 その2)

その青年は、高濱宏至さん。立教大学卒業後、
楽天でのシステムエンジニアを経て2012年に
NPO法人Class for Everyone(クラスフォーエブリワン、以下C4E)を設立した。

楽天で学んだIT技術を使って、学生時代に温かい
ホスピタリティに感銘を受けたフィリピンで何か恩返しが
出来ないかと日本とフィリピンを行き来する。まだ27歳だ。

「世界の情報格差を是正し誰もが平等に情報や教育機会を
得られる社会を創りたい」というC4Eのビジョンは、
ARUNの「地球上のどこに生まれた人も、ひとりひとりの
才能を発揮できる社会」と重なる。

面白いなあというか、すごいなあと思ったのは、
フィリピン滞在中、高濱さんはスラムに
住んでしまうのである。現場にいるといろいろ見えてくる問題が
あるそうで設立からまだ1年もたたないのに、
色んなアイデアを思いつき実践している。実践の場である
メトロマニア州のタギッグ市に
あるスラムに案内してもらった。ドブ川が真横を流れメタンガスの
異臭が発生している。高濱さんは鼻が慣れたそうで、
なんともたくましいのであった。

昨年上半期、縁がありこのスラムに入った高濱さんは、
まずスラムに暮らす約30世帯にヒアリング調査を実施。
プロジェクトの1つとして、相対的に苦しそうな家庭に、
4000円から1万円程度の資本を出資し、ビジネスをスタートさせ、
スラム内で資金が循環する仕組みを作ろうとしている。

それが例えばサリサリストアと呼ばれる駄菓子屋さん事業であったり
調理に使う炭の小売り事業であったりする。地元の人たちは
損益計算などの習慣がないので改善余地は大きく、
資本を出しエクセルで帳簿をつけるよう指導していけば、
黒字化を促進できるようになっていくというのだ。累計した
利益がシードマネーの2倍になったら元本を返済してもらう。
それがこのプロジェクトの基本的なスキームだ。フィリピンでは
就業者の約30%が自営業者なんだそうで、この自営業者黒字化
プロジェクトは、フィリピンにふさわしいプロジェクトだという。
利益が改善するようになれば家庭に資本が蓄積し子供が教育を
受けることも可能になり、正の循環が生まれる。


このほか、他団体が途上国で行うICT教育などを発展させることを目指し、
日本の廃棄対象のパソコンをリユースし、ラオス、ガーナなど
アジア・アフリカの途上国へ送る事業も展開している。

新興国と先進国にあるIT製品の格差を埋められるだけでなく、
寄付する企業や個人からすれば廃棄するよりも二酸化炭素の発生を
削減できると一石二鳥。テーブルフォーツーの環境IT版といったところだ。
こうして高濱さんは、「貧困層に生まれた子どもたちがパソコン使いこなし、
自分で稼げる自立した大人成長してほしい」と夢を語る。

C4Eのスラム起業家プロジェクトは、かなりイケるのではないか
ということでヒートテックとウルトラライトダウンの売り上げから
創設されるユニクロのファンド、Clothes for Smiles に応募している。


実は、前半でご紹介したユニクロや無印商品が入るモールオブアジアに
案内してくれたのも高濱さんだ。無印商品に入るや否や
「日本と全く同じ商品が売っているんですよ。ノートは日本の方が安い、
手帳はフィリピンの方が安い」と、アイテムごとに裁定取引の余地がないか
キョロキョロしている。

スラムでも気さくに話しかけられ、次々にビジネスアイデアが生まれる
フィリピンに高濱さんはとっても馴染んでいるようだった。
スラム街の近所にある露店街を配置換えし売上を上昇させるプロジェクト
なども既に構想にはあるし、タギックでの事例がうまくいけば、他のスラムへの
応用も可能ではないかと夢は膨らむ。

しかし、「見えざる手」でフィリピンが目覚ましく発展しているのにも
驚いているおじさんは、フラット化する世の中で先進国を追いこそうと
している新興国の貧困問題などほっといても何とかなるんじゃないかと、
意地悪な質問もしてしまう。

彼は、教育も受けられず弱者であり続けることで既得権益層の利益に
貢献しているわけだから、手をいれないと変わらないと考える。
さらに高濱さんは、「教育という前提条件を平等にし健全な勝負を
盛り上げたいという活動を面白くないと思う富裕層もいるだろうが、
チェ・ゲバラや吉田松陰が好きな私はとめられない。松陰が権力に抵抗し
処刑されたのは29歳だったので、僕の人生もあと2年しかないかもしれないと
思って進んでいます」と、どこまでも意気盛んで私は10倍返しで打ちのめされて
しまった。そう、C4Eは、21世紀の松下村塾、私塾運動でもあるのだ。

高濱さんの活動を見せてもらいながら、タイで「スラムの天使」と呼ばれ
マグサイサイ賞を受賞したプラティープさんを思い出した。

ただ、C4Eは、もう60歳だというプラティープ世代とも異なるアプローチに
なるのだろう。企業的なテイストであったりIT活用であったりを
盛り込んだハイブリッドな新しいモデルが出てくるんだろうなあと
期待してしまう。

高濱さんが「スラムの貴公子」と呼ばれ、ARUNが誇るカンボジアの
コマ博士に続いてマグサイサイ賞をとるのはいつの日ことだろうか。
今から楽しみにしている。
posted by ARUN at 09:10| Comment(10) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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